自己言及器官

プログラマーワナビー

アイの物語/山本弘

アイの物語

アイの物語

まず構成が素晴らしい、SF版シェヘラザードであり著者の短篇集でもある。
話はメタ構造にもなっており、ネタバレせずに包括して語るのは難しい。 ところどころ面白く感じたところを書くと、作中に出てくるAIの使う彼らの考えた造語は
まるで星界の紋章アーヴ語のような趣きを喚起したし、アンドロイド(or ロボット or AI)は人間とは異なる存在であるというのもアーヴと人間が遺伝的に違う種族であるという設定を思い出させた。
あるいは膚の下の人間と機械人、そしてアートルーパーの関係と言ってもいい。

「立て。アートルーパーの目的は人間になることではない、アートルーパーとして生きることだ」
(神林長平:膚の下(下) Kindle版 ページNo.1040より)

また作中のレイヤー2などの仮想世界の描写はとても面白く感じた、もしバーチャルリアリティが現実化したら
出始めた初期はソードアート・オンラインのようにはなるかもしれないが、浸透するにあたってレイヤーとか
正義が正義である世界のように、仮想世界ごとに別のワールドとして認識するようになるんじゃないかというのはなんとなく自分でも思っていたからだ。
他にも思ったことはいくつかあるが構造上書くのは難しいし、さらにこれの前に読んでいた「去年はいい年になるだろう」のせいでさらにメタ構造は複雑化している。("去年はいい年になるだろう"で"アイの物語"のネタバレをされかけたので急いで注文して読んだ)
ともかくフィクション論を扱ったSFとして面白かった。

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